企業理念の策定後、ライター・編集者ができること

企業経営では、根本にある理念や目指す方向性、大切にしたい価値観を言語化し、関係者にきちんと示すことが非常に重要です。いまは「企業理念」「MVV(ミッション/ビジョン/バリュー)」などで表現することが多いですよね。
コピーライターや編集者、ライターなどが、その言語化の作業をお手伝いすることもあります。しかしさらに重要なのは、言語化が“完了してから”の活動です。
今回は企業理念やMVVを策定した「後」のプロセスにおいて、どんな施策が必要となるのか、そこでライターや編集者がどのような役割を果たせるか、簡単に考察してまとめておきたいと思います。
それは、正解のない長いながい道のり
企業理念やMVVは、「つくって終わり」ではありません。むしろ、つくったところからがはじまりであって、そこから「その言葉を社内に着実に浸透させていく」「言語化した内容を社員に体現してもらう」という大きな目的を目指す、長い道のりが続くことになります。
しかも、施策やプロセスに正解はないので、一体何から着手すればいいのか、どのくらいリソースを割くべきなのか、どんな専門家に助けてもらえばいいのか……など、暗中模索しながら取り組むケースがほとんどでしょう。施策の成果を評価する基準や方法を定めるのも、なかなか難易度の高い課題です。
一般的によく行われる施策
社内への浸透施策には、「何か一つやればOK」という、ウルトラC級の技は残念ながらありません。かなり長期的なプロジェクトになることが多く、時間も労力もかかります。
ひとまずは以下にオーソドックスな施策、よく用意される制作物を挙げてみました。社内の状況をみながら、いくつもの施策を掛け合わせ、根気よく取り組みを続けていく必要があります。
<手元に配布する>
- ビジョンブックの作成、配布
- ハンドブック、もしくはカードの作成、配布
- 社内報を通じた定期発信
- 行動指針、ガイドブックやマニュアルへの反映
<目に付くところでシェアする>
- イントラネットなどを通じた発信
- ポスターなどの掲示
- オウンドメディアでの継続的なコンテンツづくりと社内への共有
<直接説明する>
- 社内説明会、イベントの開催
- 部署やチームごと、もしくは個人に対して直接説明
ほか
ライター・編集者が「聞き手」「書き手」としてできること
理念・ビジョンの社内浸透施策に関しては、経営陣や社内の担当チームの長期的なコミットが大前提であって、外部から携わるライター・編集者が果たせるのはあくまでもごく一部分の役割です。
その中で、ライターや編集者が保持する「聞き手」「書き手」としてのスキルはどう活かせるのでしょうか。ざっと整理してみました。
1)「取材」による情報収集
取材やヒアリングによって、社内浸透施策に必要となる情報を集めます。基本となる情報構成は、例えば以下のようなものになることが多いでしょう。集めた情報は1本の記事に整理整頓するのではなく、あくまでも集められるだけ集めておき、情報発信をしていくための素材として扱います。
<取材項目例>
- 定められた理念についての具体的な解説
- 理念に込められた経営陣の想い
- 理念を策定した背景(時代背景、外部環境要因など)
- 理念策定によって社員に期待する変化
- 理念策定によって何を目指すのか ほか
個人的には、経営陣や社内の担当者がぐっとコミットするプロジェクトだからこそ、ここで外部ライター・編集者が客観的な視点から取材することに大きな意味があると考えています。
2)収集した情報の整理と精査
取材の次に発生するのが、集めた情報を施策に合わせて整理・精査していく編集作業です。例えば「ビジョンブックをつくるためにはどんな内容と構成が必要か」「毎月発行の社内報を使うなら、どんな企画が考えられるか」など、目的や制作物の特性を踏まえて、情報の取捨選択を行います。
3)精査した情報をもとにしたテキスト作成
施策の目的と制作物、企画内容が決まれば、次は実際に原稿をつくる作業が発生します。これは、オーソドックスなライティング業務ですね。
何をどこまで受けられるのかは、ライターや編集者一人ひとりの守備範囲や得意分野、関わる企業の規模や体制などによって変わってくる部分が大きいので、あくまでも一例です。
インハウスエディターや広報担当者でないとできないことと、外部から携わるライター・編集者だからこそできること、両方の役割があると思います。この辺りのスキル精査や役割についての考察は、今後も深めていきたいですね。
おまけ:有名な社内浸透施策
最後に、理念やビジョンの社内浸透を目的とした施策で、実際に企業が行なっている有名な事例をいくつかご紹介したいと思います。アイデア次第でさまざまな施策が検討できそうですね。
●「トイレの鏡に企業理念」
ある企業では、オフィス内のトイレの鏡の部分に理念のコピーを印字しているそうです。「日常的にすべての社員が使い、必ず目を留める場所」としてのトイレの鏡。なるほど!という感じですね。
●「MTG資料の冒頭に必ずMVV」
これも知っている方は知っている有名なケースだと思います。ある企業では、会議で使う資料やイベントの登壇資料など、すべてのスライド、パワーポイントの冒頭にMVVパートを挿入しているそうです。これも「いかに日常的に社員の目に留めるか」を考えたうえでの施策でしょう。

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