私たちの課題

年末年始にゆっくり考えたいライター・編集者の「キャリアの広げ方・深め方」の話【前編/駆け出し時代編】

今さらですが、改めて自己紹介をいたします。大島悠(おおしま・ゆう)、PR/広報領域で仕事をしているフリーランスのライターです。今回は「ライター・編集者のキャリア」の話をしてみようかと思います。

書きはじめたら思いのほか長くなってしまいました。そこで前後編にわけて、前編は「広げ方」として自分の駆け出し時代のことを中心に振り返り、後編で「深め方」、中堅〜ベテランと呼ばれるようになってからのキャリア構築について考えていきます。

まずは前編「キャリアの広げ方」は、まだライターの仕事をはじめたばかりの方、これから企業広報領域の仕事をしたいと考えている方向けの内容です。

もう10年近く前の話も含まれるので、いま参考になるかどうかは正直わかりません。ただ何かしら、どの仕事にも共通することがあると思いますので、あくまでもサンプルのひとつとして、ヒントにしていただけたらうれしいです。

「やりたいこと」からではなく、「何が売りものになるか」を考える

私がフリーランスとして活動をはじめたのは2013年、30歳になった年です。それ以前はDTP制作会社で雑誌のデータをつくる仕事をしたり、企業の制作物を専門につくる会社でディレクターをしたりしていました。

ちなみに会社を辞めたのは、忙しすぎ&会社員としての先が見えなすぎてメンタル不調に陥ったから。転職せずにフリーになったのは、特にやりたいこともなく、今までと近い仕事を他の会社でもう一度やる気が微塵も起きなかったから。まったくもって前向きなスタートではありませんでした。

しばらく短期派遣などで働いて食いつなぎつつ、自分の「売りもの」になるのは何か、それを「買ってくれる人」はどこにいるのか、必死で考えました。

1)売りもの:ライティングスキル/制作物のディレクター経験/BtoBビジネスに対する多少の理解
2)買ってくれる人:企業をクライアントとして制作物をつくっている、小さいデザイン制作会社か編集プロダクション

少ない業界経験から、自分くらいのライティングスキルでも重宝してくれる企業があること、そういう企業から制作を請け負っている小さな制作会社がたくさんあること、そういった制作会社が、ライターを社内で抱えていることはないことまではなんとなく理解していました。

そこで「企業広報支援ライター」という肩書きをつくり、自分の経歴やスキル、「こんな感じでお役に立てます」的なことを紹介する資料(実績はほとんどなかったので、ポートフォリオはつくれませんでした)を作成。検索でみつけた制作会社に片っ端から送りました。詳しくは覚えていませんが、確かリストは50件くらいあったと思います。

小さな制作会社はとくに人手不足・パートナー不足なのが常なので、資料を送付したうち10社ほどとつながり、そのうち数社は継続的なお取引へと移行することができました。

よく「どうやって仕事をとればいいかわからない」と、駆け出しのライターさんから相談されることがありますが、「自分がやりたいこと」から考えると、うまくいかないように思います。

仕事というのはそもそも、「買いたい人」のニーズがあってはじめて成立するものです。「売れるもの(役に立てること、スキル)」と、それを「買ってくれる人」がどこにいるのかを考えるのが、仕事やビジネスの基本なのだと、当時の自分を振り返ってしみじみ思います。

それから、はじめは行動量も大事だと思います。フリーランスとして活躍している人と話していると、新人時代は「何百件も企業にコンタクトを取っていた」とか、「講座に通って、毎回課題をしっかりやる&講師の人に即日お礼の手紙を出していた」とか、何かしらの「行動」を徹底していたエピソードをうかがうことが多々あります。

「自分は何のプロなのか」「誰の役に立てるのか」をピンポイントで発信する

複数の制作会社とつながりができ、それなりに実績ができると、「次はどうしよう」と考えるようになりました。制作会社を介して仕事を受けるということは、いわゆる「下請け」もしくは「孫請け」になるので、こちらから何か提案したり、コントロールできる範囲は少ないものです。

また、そもそもフリーランスの場合、キャリア相談にのってくれて、「そろそろ君もこれにチャレンジしてはどう?」とステップアップするチャンスをくれる優しい上司はいないので、自分で「次はどうするか」を考える必要がありました。

当時、私は33歳くらいでしたが、「このまま制作会社と仕事をしていても、歳をとったらたぶん若い人に流れちゃうよなぁ」と、かなりの危機感を感じていました。現状維持=ゆるやかな低下カーブ。切実です。

私にとっての「次のステップ」は、下請けではなく、企業から直接お仕事をいただくことでした。そこではじめたのが、自分個人名義での情報発信です。

正直なところ、当時は今とまったく状況が異なっていました。TwitterやFacebookを利用する人が急増し、noteなど、個人でも簡単に発信ができるプラットフォームが整いはじめた頃です。私は公式サイトをつくり、自分の手掛けている仕事の内容や、ノウハウなどをまとめて片っ端から記事にし、実名のSNSアカウントで発信していきました。

結果的に、ライターを探している企業の人が私のサイトにたどり着き、そこからお問い合わせいただくルートをつくることができました。

2021年末の現状だと、Twitterもnoteにも相当な情報が溢れていて、競争率はかなり高くなっていると思うので、当時のようなブーストは見込めないかもしれません。

ただ今でも大事だと思うのは、次の3点です。

1)「自分は何のプロなのか」をひとことで説明できるようにしておく
2)「誰に」「どんな価値を提供できるのか」「どう役立てるのか」を明確にしておく
3)手を広げすぎない(「何でもできる」=「何にもできない」)

ポートフォリオや自己紹介資料を作成するとき、実績を羅列するだけではなく(1)と(2)がしっかり伝わるようにしておくことが大切です。その際の注意点が(3)で、けっして欲張らないこと。

ついつい、いろいろなジャンルの実績を並べたり、幅の広さをアピールしたり、自分のやりたいことを全部伝えたくなってしまうと思いますが、それはだいたいの場合、マイナスに働くことが多いです。

駆け出しのライターがやってしまいがちなのは「何でも興味あります! 何でも書きます!」というアピールなのですが、発注者側はそういわれると果てしなく困るものです(笑)。

突破口を開くためにはいろいろやりたい気持ちを一旦おさえて、「自分はこの分野が得意です」「こういう風にあなたのお役に立てます」と具体的に伝えること。その方が、それを必要としてくれる人に刺さるのは間違いありません。

キャリアの「深め方」も基本は同じかもしれない

久しぶりに、10年ほど前のことを思い出して今回の記事を書きました。私が思う、キャリアの「広げ方」で重要なポイントは以下2つ。

1:「やりたいこと」からではなく、「何が売りものになるか」を考える
2:「自分は何のプロなのか」「誰の役に立てるのか」をピンポイントで発信する

改めて書いてみて思いましたが、これは駆け出し時代に限らず、中堅でもベテランになっても変わらないことかもしれません。

きっとみなさん、それぞれの(1)と(2)の答えがあると思います。私とはぜんぜん違う道筋をたどってきた方もたくさんいると思いますので、そんなみなさんのご経験も、来年はどんどんシェアいただけたらうれしいです。

前編は基本的な振り返りとなりましたが、後編では、まさに私自身も直面している課題である「キャリアの深め方」について考えてみたいと思います。


 

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大島 悠

大島 悠

「トナリノ広報部」運営責任者。企業広報領域で活動するライターです。

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