私たちの課題

「PR/広報領域で活動するライター・編集者」という説明に、限界を感じはじめた話を聞いてもらえますか?

なんだか、ものすごく分断やすれ違いが増えてない?――そんな風に感じることが、ここのところとても増えました。だからこそメンバーのみなさんともこの感覚を、一度共有しておきたいなと思います。

トナリノ広報部というコミュニティは「PR/広報領域で活動するライター・編集者のコミュニティ」としてはじまり、「書く力を、企業(ビジネス)にどう役立てる?」を共通の合言葉として活動してきました。

たださまざまな分断やすれ違いを経験し、自分たちの仕事について「PR」「広報」「ライター(ライティング)」「編集者(編集)」あたりの言葉を用いて表現することに、そろそろ限界を感じています。

あいまいな定義の言葉が掛け合わされてしまい、企業と書き手(フリーランスライターなど)、企業の内部(経営者と広報担当者など)、同業者同士など、いろいろなところで実にさまざまな分断やすれ違いが起きている気がしています。

その結果生まれている現象の数々が、「採用ミスマッチ」「絶対不在のスーパーマン探し」「四面楚歌状態」「スキル迷子」「ブラックホールとの消耗戦」「常識という名の罠」などです。……と、これだけではなんのことかまったく伝わらないと思いますので、一つずつ詳しく解説していきましょう。

みなさんも何かしら心当たり、あるのではないでしょうか……?

はじめに結論:私たちの仕事は「ステークホルダー・コミュニケーション」である

各論に入る前に、まずはすべての前提となる(現時点での個人的な)結論を。

ライティングや編集などの「書く仕事」でビジネスに貢献するためには、「ステークホルダー・コミュニケーション」(もしくはステークホルダー・リレーション)の一部を担う必要があると考えます。

企業目線で言い方を変えると、ライターや編集者など「書くスキル」を持つ人に期待できる役割は、ステークホルダー・コミュニケーションの一部である、といった感じでしょうか。

企業には、あらゆるステークホルダーが存在します。顧客、採用候補者、従業員とその家族、地域社会、株主、取引先、各種メディア、などなどなど……企業をとりまくあらゆる関係者の方々と適切なコミュニケーションをとってビジネスを円滑に進めるために、さまざまな形で言葉を尽くす必要があるわけです。

以前、その全体像を整理しようと試みたこともありました。

PR/広報×ライティング・編集の仕事をカテゴライズしてみる

 

大きな「ステークホルダー・コミュニケーション」の枠組みの中に、手段として「マーケティング」「セールス」「(狭義の)PR」「ブランディング」「採用広報」「インターナルコミュニケーション」「IR」などがある、というイメージ。

まずはこの超ざっくりイメージを念頭においていただき、話を進めていきましょう。

職域の全体像が見えていないことによる、不幸な現象

「企業にとって必要なステークホルダー・コミュニケーションを担う」という役割、職域の全体像。その認識がズレていることにより、数々の不幸な現象が引き起こされている気がします。

1)企業がよく陥る現象

ライターや編集者、広報担当者などは、例えば「法人営業職」「人事」「事務職」のように、比較的歴史が長く、スキルセットがある程度イメージできる職業とは少々勝手が異なります。だからこそ、採用やパートナー探しに苦戦しがち。

●採用ミスマッチ

例えばBtoB企業が自社発信のためのコンテンツ制作を担う人材を求めて「広報担当者」の求人を出したが、集まってきたのはBtoC企業でメディアリレーション業務をしていた人ばかり……など、なかなか自社の課題に合ったスキルを持つ人を見つけられない現象。

●絶対不在のスーパーマン探し

広報担当者やインハウスエディターなどの採用にあたり、「業界経験あり」「PR実務経験あり」にはじまり、広報、マーケティング、採用、社内広報などもすべて一緒くた、制作物のアートディレクションやコンテンツの編集・ライティング、ときにはオウンドメディア立ち上げやSNS運用などまで、求めるスキルてんこ盛りのジョブディスクリプションができありがちな現象。どこに紹介を求めても当然、「そんな人は現実にはいません」となる。

 

2)中小企業の広報担当者、インハウスエディターがよく陥る現象

スタートアップやベンチャー、中小規模の企業の場合、一人の担当者がステークホルダー・コミュニケーションに関連する業務を一手に担うことがほとんどです。その重要性が認識されていなかったり、役割のすり合わせができていなかったりすると、お互い不幸なことになりがち。

●四面楚歌状態

基本的に社内に同じ職種の人はおらず、担う業務範囲も広いうえに明確な“正解”が存在しないので孤独になりがちな現象。長期的にみると非常に重要な仕事を担っているにも関わらず、売上など直接的な数字で成果を証明することが難しいため、周囲の人たちの理解がないと四方八方からの板挟み状態で肩身が狭くなり、とてもつらい。

●スキル迷子

業務範囲が非常に多岐にわたるのに加え、周囲から「重要な役割」とあまり認識されていない場合、本人も「何でも屋みたい…」と思い込みがちな現象。一つひとつの業務を具体的に紐解いてみると、経営と密接に関わる業務、複数の経営課題解消を目的としたプロジェクトマネジメント、コーポレートブランディング、コンテンツの企画・編集、クリエイティブディレクション、リスクマネジメントなど、実は応用の効くスキルがたくさんあるから自信を持ってほしい。

3)ライターや編集者など、書き手がよく陥る現象

書き手も、自分が担っている(担える)本質的な役割が「ステークホルダー・コミュニケーション」であると認識ができていないと、目的を見失ったり、他のジャンルの情報に踊らされたりしてしまいます。

●ブラックホールとの消耗戦

本来はコミュニケーションのための手段にすぎない「情報を発信する」ことそのものが目的化してしまい、どんなに仕事をしても誰とコミュニケーションを取っているのか、何のためにコンテンツを作っているのか……と、本来の目的や自分の存在意義を見失ってしまう現象。対峙しているのがブラックホールであるような気がしてきて、成果や手ごたえを得る前に消耗し疲弊してしまう。

●常識という名の罠

自分が活動している領域とはかけ離れている“常識”に、振り回されてしまう現象。「ライターはこれが常識!」と有名なライターさんがおっしゃっていたとしても、例えば出版業界でブックライティングを専門としているライターと、マーケティング領域のスペシャリストとしてSEO記事に特化しているライター、雑誌などでコラムを書いているライター、そして私たちのように企業のステークホルダー・コミュニケーション領域の仕事をするライターとでは、その「常識」はまるで違う。

例えばよく耳にするケースとして、Webメディアの編集者さんが「ライターに求めているのは文章力ではなく企画力」と言うことがあるが、企業と仕事をするライターはまずそもそも文章力がないと一瞬で切られる。そういう罠があちこちにひそんでいますのでご注意を。

言葉の限界を感じるから、別の角度から捉えなおしてみたい

今回、例に挙げた現象は、「PR」「広報」「ライター(ライティング)」「編集者(編集)」などの言葉を使うことによって、長年解決しないまま余計にこじれてしまっているような印象を受けます。

だからもう少し俯瞰したところから自分たちの仕事を眺めて、〈 私たちの仕事は「ステークホルダー・コミュニケーション」である 〉と捉えなおすことからはじめ、「じゃあどうすれば前進できそう?」という議論をみなさんとしていけたらいいな、と思っています。

とりとめのない話になってしまいましたが、今回はここまで。このテーマについては今後、長い時間かけながら深掘りしていきます。

トナリノ広報部

トナリノ広報部 運営チームのメンバーがお届けしています。

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