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「男性向けモテ本」の冒頭8ページに、“企業広報はじめの一歩”の大原則が超つまっていた話

以前、敏腕PRパーソンの方にすすめられて、自分ではぜったい手に取らない類の本を購入しました。AV監督・二村ヒトシさんが書いた「男性向けのモテマニュアル本」です。

(男性どころか女性向けの恋愛本にも縁がないんだけど?)と思いながらページを開いいたところ……「はじめに」を読んで「お?」と思い、目次をざっと眺めて「おおお?」と前のめりになり、本文冒頭8ページを読んで「ぬおおお! 何だこの超本質的なコミュニケーション論は!」とのけぞりました。

冒頭8ページに、“企業広報はじめの一歩”の大原則が超詰まっていたのであります。せっかくなので、自分のメモもかねて簡単にご紹介します。

目次の時点ですべてを撃ち抜かれてしまった

まず、ざっと眺めて「おおお?」となった第1章の目次はこちら。

1:そもそも「モテ」とは何でしょう?
2:「マニュアル本」を読んでしまう男がモテない理由。
3:あなたがモテないのは「自分について」ちゃんと考えていないから。

わたしたちが企業の広報支援をするときの質問と、めっちゃシンクロしてるじゃないですか。そのまま、企業にとっての“モテ”、たとえば「認知度」とかに置き換えてみましょう。

1:そもそも「認知度」とは何でしょう?
2:「事例」や「ハウツー」を真似ても認知度が上がらない理由。
3:あなたの会社の認知度が上がらないのは、「自社について」ちゃんと考えていないから。

採用バージョンでもいけます。

1:そもそも「採用」とは何でしょう?
2:「事例」や「ハウツー」を真似ても採用がうまくいかない理由。
3:あなたの会社で採用ができないのは、「自社について」ちゃんと考えていないから。

もうこれだけでバッサリ斬られた感ありますけど、次いきますね。

「あなた(の会社)は、どんなふうにモテたいのか?」

本文でも本質的な問いが続々と登場して、ぐさぐさ刺されていきます。

あなたは、そもそもどうして「モテたい」のか、考えてみたことはありますか? (- P.16)

会社としてなぜ認知度を上げたいのか? なぜ人を採用したいのか? それをしてどうしたいのか?—— 当たり前かもしれませんが、ここを問い直すこと、大事だと思います。

「自分はナニがしたいのか? ほんとうはナニが欲しいのか?」こそが「自分はナニモノなのか?」ってことであり、人間は、それをある程度自分で理解できてないと「相手との関係をどうしたらいいか」わからなくなって困ってしまうことがあるからです。(- P.17)

「自分たちの会社は、どんな会社なのか」「どんなことを目指しているのか」「誰(どのステークホルダー)とどんな関係性を築きたいのか」——ここがはっきりわからないと、コミュニケーションの支援がしたくても私たちは何もできません。

そして、極めつけがこちら。

あなたにとっての「モテている」とは、どういう状態なのか? あなたは、具体的にいうと「どういうふうにモテたい」のでしょう?(- P.18)

例えば「認知度を上げる」と一口に言ってもさまざまな指標が考えられます。「限られた業界の中で知名度が上がればよい」のか、「SNSで定期的に話題になりたい」なのか、「とにかく若者から憧れられる会社になりたい」なのか。

いろいろなパターンがあり、どんな風に思われたいのかによってコミュニケーション施策は大きく変わってくるのです。

ちなみに本書ではここから先、「どういう風にモテたいのか」の例が箇条書きで5ページぶん、延々と続きます。(すごい)

▶︎モテるということが、かりに「セックスに不自由しない」という状態だとするなら。あなたは、誰とセックスしたいのか? 女なら誰でもいいのか?

▶︎あなたには今現在すでに妻か恋人がいて、その彼女以外の女性たちからも「もっと、いっぱい好かれたい」のか?

▶︎もう少し消極的に「女の子全般から、とにかく嫌われたくないと思っている」のか?

▶︎人もうらやむ、すっげえ美人の恋人が欲しいのか?

▶︎「つきあってた恋人に最近ふられたばかりなので、自信がなくなって、どうしていいかわからない」のか?

▶︎女というものが好きで好きでしょうがなくて、一人でも多くの女性となかよしになりたいのか?

(P.19-23より一部抜粋)

「モテたい」というたった一言の欲望のウラにも、このように千差万別な「どんな風にモテたいのか」のイメージがあるんです。つまり人と適切なコミュニケーションを行うには、このくらいの粒度で「どんな風に思われたいのか」を具体化する必要があるということですね。

モテもステークホルダー・コミュニケーションも、根っこは同じ

「認知度を上げたい」「採用力をつけたい」という企業の課題をクリアしていくには、「将来的にどんな状態になっていればいいのか? あなたの会社にとってどんな状態が理想なのか?」を、まずは明確にする必要があります。

コミュニケーション施策に関して、「WHAT(何をするか)」「HOW(どうやるか)」で悩まれている企業の方がとっても多いと思いますが、まずは「会社として、誰からどんな風にモテたいのか」を具体的に思い描くことです。

「こうありたい」という意志が明確であればあるほどWHATやHOWがおのずと見えてきますし、適切なステークホルダー・コミュニケーションが実行できるようになるものだと思います。

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大島 悠

大島 悠

「トナリノ広報部」運営責任者。企業広報領域で活動するライターです。

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