活動報告

先輩ライターに聞く「インタビュースキルを磨いた方法」【イベントレポート】

2021年4月16日、PR/広報領域に特化したライター・編集者のためのコミュニティ「トナリノ広報部」が主宰する公開インタビューイベントを開催しました。その模様を、一部ダイジェストでお届けします。

【イベントページ】https://tonarino.work/event/210416/​


ライターや編集者にとって、インタビュー力はとても大事なスキルです。

企業発信のテキストコンテンツが増えたことで、企業の中の方も、広報、営業、採用、マーケティングなど、さまざまな場面でインタビューをする機会が多くなっているのではないでしょうか。

しかし「インタビューのスキル」って、一体どのように磨けばいいのか……。

きっと、お悩みの方が大勢いると思います。

そこで今回は、「先輩ライター/編集者」としておふたりのゲストをお迎えし、駆け出し時代、どのように目の前のインタビューにのぞみ、そして聞くスキルを磨いてきたのか、公開インタビューをすることにしました。

ゲストとしてお迎えしたのは、企業広報領域のライターとして活躍するかたわら、2011年から「聞き方」に関するセミナーを開催している丘村奈央子さんと、ライタープロダクションを営み、さまざまなライター講座を運営されている株式会社YOSCAの代表・宮嵜幸志さんのお二人です。


ゲスト

<ゲスト>
丘村奈央子さん(ライター)

1973年生、1996年 信州大学卒。地方紙の広告営業、高校生向け教材編集、大手メーカーの社内報編集の職を経て2010年にフリーライターとして独立。主に一般企業からの直接依頼を受けて、経営者コラムや事業案内、社員インタビューなどを執筆している。気持ちよく話せるインタビューが好評で、取材したお客様からは「つい話してしまった」「これを言いたかった」という感想が多数。ブックライターとしてクライアントの書籍執筆に携わるほか、聞き方・書き方に関する自著も出版。最新では2020年4月『「話す」は1割、「聞く」は9割』(大和出版)を上梓。現在は、2011年から続けている「聞き方セミナー」のオンデマンド教材も準備中。

SNS一覧
https://lit.link/okmr​

「話す」は1割、「聞く」は9割
https://amzn.to/3dXNcFr​

* * *

宮嵜幸志さん(株式会社YOSCA代表/編集者)

1984年、東京都生まれ。2012年にライタープロダクション会社YOSCAを設立。ライターの育成を目的に、ライター向けプラットフォーム「フリーライターのよりどころ」を運営し、現在約7,000人が登録。また、記事ライティング事業のほか、電子書籍のプロデュース、ライティングスクール事業、イベント運営を行う。

株式会社YOSCA
https://yosca.jp/​

<聞き手>
大島悠(トナリノ広報部)

ライティングと編集を軸として、ビジネス領域のコンテンツ制作に携わる。デザイン制作会社を経て2013年に独立。PR/広報領域で活動するライター・編集者のコミュニティ「トナリノ広報部」主宰。


何が正解かわからなかった、駆け出し時代の失敗体験

大島悠(以下:大島):インタビューのスキルって、そもそもどうやって身につけたら良いのか、学習方法がなかなかわかりづらい領域ですよね。お二人は駆け出し時代、どんなご経験をされていましたか?

丘村奈央子さん(以下:丘村):社会人になって初めての仕事が営業職で、その頃の経験が今につながっていることも多いかもしれませんね。

当時、お客様に広告の枠を買っていただくための営業をしていたのですが、「どんな広告を作りたいですか?」「何を売りにしますか?」と、ヒアリングしていく工程が、インタビュースキルとも似ている気がします。

大島:確かに。営業のヒアリング力も、インタビューや取材に通ずるところがありそうです。

宮嵜幸志さん(以下:宮嵜):僕も新卒で就いた仕事が営業でした。

大島:お二人とも、もともと営業出身なんですね。まず丘村さんにおうかがいしたいのですが、ライターに転身した後、駆け出し時代にインタビューで失敗してしまった経験はありますでしょうか。

丘村:フリーライターとして仕事をはじめた当初は、何をするべきかがわからずに、「ライターの仕事はこうした方が良い!」と、自分で考えたことを全て行っていたように思います。

大島:「全て」というのは……?

丘村:例えば、当時はどんな取材でも、相手のお話をじっくり聞くことが良いことだと思っていました。要点を押さえれば1〜2時間の取材で済むはずだったのに、4〜5時間も質問を繰り広げてしまったり……。

インタビューで多くの時間を使っても、記事になる文字数は限られています。時間をかけるべきところを勘違いしてしまったのが、最初に思い出す失敗です。

大島:情報が足りないよりも多い方がいいと思って、質問しすぎてしまうこと、ありますよね。私もインタビューの時間をどのように使えばいいか、取材現場で何度も経験することで、やっと最適な時間の使い方が身についたように感じます。

宮嵜さんは、編集者として駆け出しライターさんのインタビューに同席される機会が多いですよね。編集者の視点で、駆け出しの方がやってしまいがちな失敗や、「もっとこうした方がいいのに」と感じることなどはありますか?

宮嵜:そうですね。慣れていない人のインタビューは、緊張からたどたどしくなってしまうことが多いと思います。ただ、インタビューする相手のことを事前にしっかりと調べて、そのインタビューの目的を遂行する姿勢が感じられれば、たとえ流暢ではなくとも良いインタビューになっていることが多いですよ。

もちろん、あまりにガチガチだと相手を不安にさせてしまうこともあるので、そこは注意が必要ですが。

大島:わかります。インタビューでは、「コミュニケーションが上手い」「会話が上手い」ということが、必ずしも重要なわけではないんですよね。

宮嵜:そうですね。むしろ会話好きで、自分のことをたくさん話してしまうタイプの人の方が、インタビューでは気をつけるべきことが多いと思います。

自分のインタビューを振り返ることが、訓練の第一歩

大島:現場の数を積まないと上達しない印象のあるインタビュースキル。ライターや編集者の方は、自分のやり方にお悩みの方も多いと思います。お二人はキャリアを重ねる中で、どのようにご自身のやり方と向き合ってきましたか?

丘村:訓練といえるかわかりませんが、自分のインタビューの録音を聞いたときに反省することはよくありますね。先ほども少し話にありましたが、「自分の話をしすぎてしまった」という反省など。

現場では、盛り上げるためにがんばっているつもりなのですが、1時間しかない中で、私が5分話すのか10分話すのかによって、相手から聞ける情報量が変わってきてしまいます。

私はインタビューの時間において、自分の発言は1割以下でいいと考えています。内容によっては自分の話をしたくなる時もありますがグッと堪えて、相手に話してもらうための「思い出し作業をお手伝いする」と言いますか。

今でも上手くできないこともありますが、このインタビューは何のための時間で、今日はどういった目的でここにいるんだろう、と毎回心に留めておくこと。現場でも軌道修正をしていくことが必要ですよね。

宮嵜:僕の場合はインタビューに同席させていただく経験が多かったので、ベテランライターの方に同席したとき、自分だったらどう深掘りしていくかを考えながら比較したりしていました。

例えばインタビューの導入で行うアイスブレイクは、ライターさんによってやり方がさまざまです。いろんなパターンのアイスブレイクを見てきたことが、自分にとってよい経験になっています。

そしてもう一つ、自分がインタビューを受ける立場になってはじめて学ぶことも多かったです。

丘村:自分がインタビューする時とは違う、客観的な視点を持てますよね。「自分だったらこう質問するなぁ」「そこを深掘りしていくんだ!」など、自分と比べながら、いろいろと感じることはありました。

大島:自分以外のインタビューを見たり、自分が受けたりする機会、やっぱり大事ですよね。思考のトレーニングになるというか。

無表情な自分にびっくり! ときには身振り手振りや表情もチェック

丘村:私の場合は、お客様に対して「他のライターさんはどうされていましたか?」と率直に聞いてみることもあります。

「私はその方に比べてどんな印象でしたか?」と伺ってみると、褒めていただくこともあれば、「質問ばかりだから、もう少し世間話をしてくれてもいいかも」などと、ご意見をいただけることもあります。

大島:なるほど。それも学びが多そうです。

宮嵜:僕は、インタビューの現場を動画で撮影をすることもあって。

身振り手振りはもちろんなのですが、話しているとき、聞いているときの表情、現場でのふるまいなどを細かく振り返ることもあります。

大島:動画撮影はハードルが高いかもしれませんが、今はオンラインでインタビューする機会も多いですからね。画面に映った自分の表情をチェックできるチャンスだと思います。自分で思っている以上に無表情でびっくりしたり……(笑)。

宮嵜:話している内容以上に、身振り手振りや表情が与える相手への影響はとても大きいと感じますね。

丘村:表情、大事ですよね。私は相手の方にも「早めに笑ってもらう」ことを大事にしています。

お仕事とは関係ないことなど、相手の方にリラックスいただけるようなことを積極的に話してみる。そうすると、結果的に自分の表情も口角が上がっていたりと、自然に明るい表情を作れます。

相手との信頼関係を築く、インタビュー前のアイスブレイク

大島:いろいろと、自分自身のインタビューを振り返るポイントをうかがってきましたが、他に、お二人が良いインタビューを行うために心掛けていることはありますか?

丘村:インタビュー前に、「今日の目的」をお伝えするようにしています。例えば採用広報で新人社員の方へインタビューする場面では、「会社に入りたいと思ってもらえる方を増やせる、明るい感じの記事にしたい」など、なるべく具体的に。

そして、「書いてはいけないことは書かないし、あとで訂正もできますよ」ということを一緒にお伝えしています。「エピソードの順番はどうでもいいので、今は思い出したことをどんどん私に教えてもらえませんか?」というスタンスですね。

宮嵜:わかります。まずは相手の方の不安を取り除くことに注力しますよね。「きれいに話を成り立たせられなくても、このライターさんがどうにかしてくれるだろう」と感じ取ってもらうことが大事かなと思います。

そのために、事前に相手の方にまつわる情報を調べて、そのお話しをすることもあります。ここまでの情報はこの人も把握してくれているんだな、と感じていただけたら、信頼関係も築けるように思います。

丘村:初めてインタビューを受ける方だと、話すことを書類にまとめてそれを読んでくださる方もいますが、「今日話をしてみて思い出したことを、そのままでいいので何でも教えてください」とお伝えしています。

緊張されているのが伝わるので、「緊張しますよね」とお声がけしたり、「すぐに慣れますよ」と気軽に話しかけてみると場が和んだりもします。

大島:アイスブレイクはただの雑談というよりも、相手の方とインタビューの目的をすり合わせて、お互いに協力体制を築く大事な時間になっているかもしれません。

「今日は協力者として来ました」というスタンスをお伝えすることで信頼関係も築けて、その結果、良いインタビューにつながっていくのですね。


イベントを振り返って

今回「インタビュースキルを磨いた方法を、インタビューする」という、まさに、インタビュー現場に同席している感覚で視聴できるイベントを開催しました。

「インタビューは相手を知るための時間」という言葉が印象に強く、相手の方のご経験や考え、想いを話していただくための壁打ち相手としてのスキルが、インタビュアーには必要なのかもしれません。

そして、当日ご参加いただいた皆様からも多くのご質問をいただき、イベントのお時間目一杯をつかって、先輩ライターのお二人と、企業広報領域のライティング・編集のお仕事について語れる機会にできたのではと思います。

現場の数を重ねることで身につくスキルも多いですが、お二人がおっしゃるように、お客様や編集者の方へインタビューの印象をヒアリングしてみたり、動画で自分の表情を振り返ってみたりと、今すぐ始められそうな訓練も伺えましたので、今後スキルアップの参考にもしていただけるとうれしく感じます。


※本イベントは、株式会社YOSCAと共同で開発した講座「VRで学ぶインタビュートレーニング講座」のリリースを記念したトークセッションです。

https://writercareer.online/vr-interview/

◆イベント概要

開催日 2021年4月16日(水)19:30-21:00
開催方法 Web配信(zoom使用)
料金 1,000円
イベントページ https://tonarino.work/event/210416/

report by Mami Otani


※情報はイベント開催時のものです。

トナリノ広報部

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トナリノ広報部 運営チームのメンバーがお届けしています。

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