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「取材慣れしていない社員」をインタビューするときのコツ

一口に「インタビュー」といっても、その対象者によって気をつけた方がいいこと、現場での立ち振る舞い方などはかなり違います。例えば芸能人や有識者、経営者など著名な人に対するインタビューのノウハウについては、すでにたくさんの書籍やメディアの記事があります。

しかしそうではない——例えば自社の社員を取り上げた「社員インタビュー」などに際したノウハウは、以外と流通していないように思います。

そこで今回はこれまで、試行錯誤を重ねながらライターとして私が実践してきたノウハウをざっくり、まとめておきたいと思います。

「取材される方の気持ち」を、インタビュアーは意外とわかっていない

まず、ここからです。みなさんは、インタビューを受けたこと、ありますか? ご経験のない方は、友人知人でも同僚でもいいですし、ごく短い時間でいいので、「インタビューを受ける」経験をしてみることをおすすめします。

それは、なぜか。「インタビューを受けるにもスキルが必要なのだ」と、身にしみてわかるから。

① 相手の質問の意図を、瞬時に汲み取るスキル
② 伝えたいトピックを脳内でまとめ、わかりやすく話すスキル
③ アウトプットをイメージして、求められる回答をするスキル

 

著名人や経営者で、しょっ中メディアに出ている方、つまり「インタビュー慣れ」している人の中には、取材した音声をそのまま書き起こせば記事になるんではないか……? なんていう、すぐれた話術をお持ちの方もいらっしゃいます。

でもそんな人は、本当にひと握りしかいません。だいたいの人は取材なんか受けたこともありませんし、上記のスキルも持っていません。だからこそ、インタビュー時には丁寧な工夫が必要になるんです。やりすぎてちょうどいいくらいだと思っています。

1)「何のための取材か?」を念入りに伝える

意外と多いのが「何のための取材か」その目的を、インタビューを受ける社員の方がきちんと理解していないまま取材がはじまること。採用のため、広報活動のため、企業が主導でコンテンツをつくるのですから、何かしら「目的」があるはずです。対象となる社員の方には、必ずそれを伝えましょう。

しつこいくらい繰り返し伝えて、ようやくちょうどいいくらいだと思います。その記事を読んだ人にどんな印象を与えたいのか、企業側の意図も合わせて具体的に伝えられるとなおよいです。

コツその1
インタビューの目的は、事前にしっかり伝える。しつこいくらい伝える。念入りに伝える

 

2)「誰に読まれる記事になるのか?」も念入りに伝える

取材される側になるとき、なかなか難しいのが「どの目線・レベル感で話せばいいのか?」ということ。例えば同じ採用のためのコンテンツでも、まだ事業のことを何も知らない学生向けのものと、幹部候補となる経験者採用を目的としたものでは、前提となるレベル感が変わります。

コツその2
そのインタビューは誰に読まれる記事になるのか、具体的に伝える

 

3)「当日、聞きたいことは何か?」をあらかじめ伝える

他の記事が山ほどでている著名人を取材する場合は、あえて質問項目を送らないケースもあります。(予定調和を崩し、記事を面白くするため) しかしそれは、思想や行動が日常からして面白く、常にエピソードが満載なインタビュイーだからこそできること。

繰り返しますが、そんな人は本当にひと握りしかいません。社員インタビューを「当日まで何を話すのかわからない」状態で進めてしまうのは、時間の無駄にしかなりません。あらかじめ「当日はこんなことを聞くから、エピソードとか思い出しておいてね」と、主要な質問項目を共有しておくことをおすすめします。

コツその3
主要な質問項目は先に送るべし。話すことをある程度、想定しておいてもらう

 

4)当日は、質問をはじめる前に不安要素を取り除く

ここからは、わたしが実際にインタビュー時に気をつけることを挙げていきます。まずは質問をはじめる前に、(1)の目的と(2)の読み手は誰かを、再度伝えることが多いです。最後の確認ですね。

そしてもう一つ大事なのは、できる限り不安要素を軽減すること。取材慣れしていない方は、どうしても「インタビューの場」自体に緊張して、構えてしまうものです。

●取材慣れしていない方が、不安に思いがちなこと

・すごくうまく話さなければいけないのではないか?
・失言や不確実な発言もそのまま、記事にされてしまうのではないか?
・自分なんかの話が本当に役に立つのか?

こうした心理状態が取り除けないと、会話が盛り上がるまでに時間がかかります。なのでわたしは、取材前に以下のことを必ず伝えるようにしています。

・「お話いただいたことをそのまま記事にするわけではない」
・「インタビューの内容に対しては、編集した後に必ず広報チェックを入れる」
・「(本人確認がある場合は)掲載される前に、ご本人もチェックして修正できる」
・「違和感のある箇所はあとから修正できる」
・「まとめるのはわたしたち編集の仕事なので、うまく話そうとしなくてもいい。ざっくばらんに、リラックスして話してほしい」

などなど。かなり「自分なんかの話には価値がない」と思っている人が多いので、「あなたの話が聞きたいんです」「大丈夫ですよ!」と背中を押すみたいな感じですね。

それらにプラスして、言葉ではないですが以下のことも気をつけています。

  • できる限りニコニコ笑顔で質問する
  • 適度に相づちをうって話を聞く(邪魔になってはいけない。うなずく動作だけでも全然違う)
  • 真正面に座らない
  • 威圧感を与えないように黒いスーツとかビシッとしすぎた服は着ない
  • 相手の目を見て会話する。そのためにパソコンや手元で猛烈にメモばかりとらない

オンライン取材が主になってからは、さらに次のようなことを意識するようになりました。

  • 自分の顔ができる限り明るく映るようにライトを使う
  • こちらの声がクリアに聞き取れるよう、ちょっといいマイクを使う
  • Zoom取材は「ワイプ芸」と心得る(対面以上に、表情や動作を大きくしないと相手にまったく伝わらない!)

細々と書きましたが、ここら辺の振る舞い方は人それぞれだと思います。みなさんはどうしていますか?

コツその4
はじめて取材されるときというのは、めちゃくちゃ不安。まずはそれを、にこやかに取り除くことからはじめる

 

5)自分が聞かれて答えにくい質問は、言い方を変える

駆け出しライターの頃は、わたしはこれができていませんでした。例えば採用などでは、「最後に学生さんにメッセージを」なんていう質問をするのが定番になりがち。でもよく考えると、ものすごい答えにくくないですか? もし自分が質問されたら。

質問をつくるときは、「こう聞かれて自分ならすぐ答えられるか」という基準で表現を見直してみるといいと思います。

ちなみに上の質問、わたしは頭を悩ませた結果、「学生の頃の自分に、今の自分からアドバイスするとしたら何て声をかけますか?」と質問するようになりました。

コツその5
質問内容は、「自分がその質問されたとき答えられるか?」という視点で見直してみる

 

まとめ

と、いうわけで。ざっくりと基本のところだけではありますが、取材慣れしていない人のインタビューで気をつけるポイントは、まとめると以下3点に集約されるかなと思います。

① めちゃくちゃ事前準備する(目的や読者の絞り込み、質問の用意など)
② 準備した内容を繰り返し伝える(あらかじめ理解してもらう)
③ 当日、取材前に徹底して、当人の不安要素を取り除く

 

すべて、特別なスキルがなくてもできることばかりだと思いますので、社員インタビューがなかなかうまくいかない……とお悩みの方は、ぜひ実際にやってみてください。

大島 悠

大島 悠

「トナリノ広報部」運営責任者。企業広報領域で活動するライターです。

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